■けの汁について

 冬になると、特別に津軽の人々に親しまれる郷土料理に、「けの汁」があります。
 けの汁は、地域や家庭によって、材料、切り方、味付けなど調理の方法が異なりますが、多くは、、だいこん、にんじん、ごぼう等の野菜類と、ふき、わらび、ぜんまい等の山菜類、それに、油揚げ、豆腐、凍み豆腐などの大豆製品を基本的な材料としていて、これを刻んで煮込み、みそやしょうゆで味付けした素朴な料理です。


 けの汁は津軽だけの特有の郷土料理ということではありません。青森の隣の秋田県でも「きゃの汁」「きゃのっこ」などと呼ばれて津軽のけの汁と同じような料理が作られていました。また、文献にも北海道、岩手県でもけの汁が作られていたことが記されています。昔は、けの汁が東北地方にひろく分布していたのではないかと思われます。そして意外なことに、九州宮崎県の宮崎郡佐土原地方のお盆料理に。「かいのこ汁」と呼ばれるけの汁に類似した料理がありました。



 けの汁は小正月と深い関わりをもち、古い昔から津軽に伝わってきた料理です。昔は、小正月の前日の十五日までに作り、十六日の朝に仏前に白粥とともに供えた精進料理でもあったのです。また、近年までは女たちが小正月をくつろぐための作り置きの料理でもあり、そして栄養豊かな保存食でもあったのです。