@仕掛け
絞漆(しぼうるし・仕掛漆ともいう)を仕掛けべらで器物に付着させ、湿気の少ない漆風呂へ2日間くらい入れ、その後、徐々に湿度を80%くらいまで高くし、5日間くらいで乾固させる。
A塗掛(ぬりかけ)
仕掛漆が乾固した上に、好みの色漆を薄くハケ塗することをいう。黄系統が多く使われる。
B彩色(さいしき)
色漆を市松状にハケで塗ることをいう。赤と緑が多い。
C呂塗(ろぬり)
前面に素黒目漆をハケで塗ることである。
D妻塗(つまぬり)
次の工程で塗る上塗の色漆と対比の強い色漆を使ったり、錫分(すずふん)・梨地粉を蒔くことによって、彩色の層にさらに色彩を加え、唐塗の文様をいっそうはっきりさせる役目を果たしている。
E上塗(あげぬり)
前面に好みの色漆や素黒目漆をハケで塗る。
赤漆を塗ると赤上げの唐塗といい、みどり色に仕上げると青上げの唐塗りという。素黒目漆を塗って、あめ色の透明色に仕上げると呂上げの唐塗と呼ぶ。

 
@種漆塗り(たねうるしぬり)
こした種漆を漆ハケで塗る。
A種蒔き(たねまき)
濡れた塗膜面へすぐ菜種を蒔く。
B放置
種まきを終えたら、器物表面に菜種が付着した状態で1時間位、冬季で30分位放置する。
C種漆の乾燥
漆風呂に入れられた種漆は、場所によって乾燥の速さが違う。出入り口の扉の方より、他の三方の壁側の方が速い。時々器物を回転させ全体が同じような速度で乾燥するような配慮が必要である。
D種はぎ
種漆の上に蒔かれた菜種をはぎ取る作業をいう。へらを塗面に対し、10〜15度に傾けて持ち、へら先全体へ同じような力が配分されるように注意しながら移動させる。
E殻取り(からとり)
種漆に密着した菜種を取る際、へらによって球形の種子がこわれ、殻が塗膜に残ることがある。このような、漆膜面に残った殻を取り去る作業をいう。
F乾燥
自分のペースで作業を進めている場合、夏季には4〜5日、冬季には5〜6日間漆風呂へ入れ、十分に乾燥させる。
G種漆研ぎ(たねうるしとぎ)
種漆の輪状突起を大清水砥・市販の赤砥・耐水ペーパーなどで水研ぎする。砥粒がが凹部に入っているので、亀の甲たわしで水洗いをし、その後、木綿布などで水分を拭き取り、自然乾燥させる。
H上漆塗り(あげうるしぬり)
漆バケで上げ漆を塗り、漆風呂へ夏季は1日、冬季は2日入れておく。
I上漆研ぎ
大清水砥や赤砥・耐水ペーパーなどで水研ぎをする。この工程を荒研ぎといい、この時の塗膜の乾燥が十分でない場合、漆風呂へもう1日入れておく。
J共漆塗り(ともうるしぬり)
荒研ぎによって平滑化された塗膜面には、凹凸部(荒気の部分と称する)と平坦部がある。凹部分には上漆を塗り、平滑化する必要がある。前工程で使用した上漆を塗ると、平坦部は仕上がり色となり、凹部は多少黒ずんだ色となる。この色むらを防止するのが共漆塗りである。
K仕上げ研ぎ
比較的硬度の高い大清水砥、するが炭、場合によっては、ろいろ炭などを、赤砥や名倉砥をあわせ砥(研ぎに使う砥石や炭の整形に使う研石)として使用し、水砥ぎする。

 

@下絵描(したえがき)
石黄粉を水で溶き、下絵を描く。
文様描(もんようがき)
絞漆や黒呂色漆で、下絵通り文様を描く。
A紗蒔き(しゃまき)
素黒目漆、あるいは素黒目漆へ油煙を混入した黒種漆を塗り、この濡れた塗膜の上に炭粉(モミ殻炭粉)をふるいに入れて蒔き掛ける。
B炭粉払い(すみこはらい)
紗蒔きが終ったら、余分な炭粉を器物から振り払い、2・3日乾燥させる。
C紗蒔き(しゃまき)
軽く空研ぎした後、素黒目漆へ油煙を混入した黒種漆を塗り、再び紗蒔きする。余分な炭粉を振り落とした後、乾燥させるが、この乾燥はていねいな程良いといわれている。3日ぐらい漆風呂へ入れ、風呂から出して後7日間ぐらい放置しておく。
D空研ぎ(からとぎ)
E素黒目漆塗
テレピンか灯油で薄くした素黒目漆をハケで薄く塗る。
F仕上げ研ぎ
大清水砥で水研ぎする。この場合、中くらいの硬さのものが使われる。
G炭研ぎ
するが炭やろいろ炭で研ぐことをいう。最近では耐水ペーパーなども使われている。
H摺漆(すりうるし)
漆をこすりつけるようにして薄く塗り、和紙で拭き取ることを摺漆という。
I艶付け(つやつけ)
角粉と菜種油で研磨材を作り、軟らかなネルで磨く。
J摺漆と艶付けのくりかえし
摺漆をし、乾燥後、指に菜種油と角粉をつけて磨く。


   
                                (「あっぱれ!津軽の漆塗り」佐藤武司 著、平成17年3月15日出版)